竜馬がゆく (六)

(私同様)高貴じゃない人へ、あるいは、竜馬のことをよく知らない人全般へ

  • ISBN(13桁)/9784167105723
  • 作者/司馬遼太郎
  • 私的分類/歴史小説(幕末・維新)・爽快な話
  • 作中の好きなセリフ/

「長州が可哀そうではないか」
と叫ぶようにいった。当夜の竜馬の発言は、ほとんどこのひとことしかない。
あとは西郷を射すように見つめたまま、沈黙したからである。
奇妙といっていい。
これで薩長連合は成立した。


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【私的概略】
 後に、維新史の奇跡と呼ばれた坂本龍馬の生涯を、司馬遼太郎の視点から捉えた代表作。
 全八巻の第六巻。
 長州藩内部でも勤皇派弾圧が起きましたが、高杉晋作や山県狂介(後の山県有朋)によって勤王派が巻き返しました。また、坂本竜馬のお膳立てにより、薩長同盟が成立し、第二次長州征伐を目論む幕府に対して長州は抗戦の備えを堅くしていきます。
 時代は、明治維新への扉が、徐々に開きつつありました。


 主な登場場面は、絵堂の戦い・亀山社中創設・薩長同盟寺田屋事件おりょうとの結婚・第二次長州征伐


【感想】
 この巻で、下克上が起きたことが明らかになります。
 日本の歴史は下克上の繰り返しです。天皇→藤原摂関家→鎌倉・室町武士(守護)→守護代・国人・土豪戦国大名)と、実力は常に、身分の高い人から身分の低い人へ移っていきました。
 徳川時代の「身分の高い人」とは、「殿様」です。「殿様」は藩を支配し、「殿様」から任されて藩を運営するのは、藩内でも高い格式を持つ上級武士たちです。彼らが「身分の高い人」になってから300年が経過するうちに、彼らは武士としての力強さを失っていきました。


 そして、この巻の初頭で、長州の上級武士たちが山県狂介率いる少数の奇兵隊に敗れ、下克上が起きます。山県は足軽階級出身の下級武士、奇兵隊は、武士意外の身分の人たちからなる軍隊です。
 また、この巻の後半で、幕府による第二次長州征伐が起きますが、殿様より偉い、幕府軍の大将が、長州兵に敗れて遁走し、ここでも下克上が起きました。


 面白いのは、戦力では常に身分の高い側が圧倒的優勢なところ。戦力差をひっくり返して身分の低い方が勝ってしまうと、そんな下克上が明らかになった途端、幕府は急速に消滅していくわけで、(薩長同盟までの坂本竜馬の苦労話も面白いですが、)今回は、そんな下克上の辺りが印象に残りましたです。


【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…4/5点
読後に何かが残った感じがするか…3/5点
繰り返し読めるか…4/5点(話そのものは、薩長同盟締結直前の難産してるくだりが面白い)
総合…4/5点


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