テルマエ・ロマエ III

ラーメンの丼のあの有名な模様は中国発祥だと思ってるへ、あるいは、戦国自衛隊とか好きな人へ

  • ISBN(13桁)/9784047272323
  • 作者/ヤマザキマリ
  • 私的分類/マンガ(笑えるやつ)
  • 作中の好きなセリフ/

…やはり この地にもローマ帝国の威光は届いていたのだ…!!


テルマエ・ロマエ III (ビームコミックス)(←同作品を扱う他ブログへ)


【私的概略】
 漫画大賞受賞作にして映画化(主演:阿部寛)まで決定しちゃった人気作品の第三巻です。
 主人公ルシウスは、古代ローマの住人。生真面目だけれど平凡な浴場の設計士でしたが、現代日本古代ローマをタイムトラベル的に行き来するという「特殊な」技能を身に付けてから、人生が一転します。
 現代日本の温泉のコンセプトを、風呂が大好きな古代ローマに持ち込んで、彼の案出する風呂は大当たりの連続。時のローマ皇帝に重用されるまでになりました。しかし、ローマ皇帝の失脚を狙う元老院が、主人公ルシウスをも謀略にかけようと、何やら悪い空気が漂い始めます。危うし! ルシウス!


 というのが、前巻までの流れ。第三巻は、元老院の暗躍とか、そういった流れを忠実に継承して、ルシウスvs元老院から送られてきた刺客、というようなお話になるかと思いきや、その流れは割と前半3分の1であっさり終了。残りの3分の2は、別の意味で「テルマエ・ロマエ」の流れを忠実に継承してました。「風呂に入ってハッピーになる」これが、1〜3巻を通している一本の芯なのです。
 今回はルシウスがタイムトラベルしたのは、草津温泉を思わす温泉街、木桶風呂、ゴージャス派手派手金ピカ風呂の3タイプ。最後のゴージャス派手風呂では、成金趣味の風呂設計を強要されて苦しむ日本の建築技師と、同じ悩みを抱えているルシウスが連帯感を持ったりして、ルシウス言うところの「平たい顔族(日本人のこと)」との距離が縮まってきた感じです。



【感想】
 ルシウスの生真面目さが良いですね。
 ルシウスの持つ、ローマ人としてのプライドは、「高慢さ」ではなく「懸命さ」になって表れ、現代日本の温泉文化を吸収しようと必死です。しかし、古代ローマ現代日本との大きな時空の差を乗り越えるのは、そもそも限界のある話。無理を無理と知らずにローマのプライドをかけて学ぼうとする態度が、彼の生真面目な様子と合わさって、おかしさを誘います。第一巻の頃は若干の軽侮があった「平たい顔族(日本人のこと)」の呼称も、今では敬意がこもっています。


 一つ意外だったのは、第二巻の終わり頃から始まった、「皇帝の失脚を狙う元老院の悪だくみ」というストーリーが尻すぼみになったこと。その後は、ある意味第一巻と同じ「現代日本の温泉を古代ローマに持ち込んで大当たり」というパターンの繰り返しになりました。これは、ある意味安心。第一巻を読んで面白かったのは、このパターンが新鮮であり、かつ、このパターンを繰り返すことに、水戸黄門的な安心感があったからです。私は古代ローマの政争劇を読みたいわけではありません。このパターンを読みたいのです。
 このパターンが第三巻まで繰り返され、なおもワンパターンにならないのは、現代日本の風呂・温泉文化に対するライトの当て方が毎回違うからでしょう。「日本にはこんなに多様な風呂があったか」読んでる私も日本人なのにビックリです。こんなに多様なライトの当て方ができるというのは、本作の作者が外国の方と結婚されている、というのも関係あるのかもしれません。



【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点(今回は、問題なく読めます)
読後に何かが残った感じがするか…1/5点(読後感の良さ、ですね)
繰り返し読めるか…3/5点(数回読めます)
総合…4/5点(温泉街で苦闘する場面が面白かった)