竜馬がゆく (五)

ついてないへ、あるいは、竜馬のことをよく知らない人全般へ

  • ISBN(13桁)/9784167105716
  • 作者/司馬遼太郎
  • 私的分類/歴史小説(幕末・維新)・爽快な話
  • 作中の好きなセリフ/

するめが、大砲になる話をごぞんじでござるか」


新装版 竜馬がゆく (5) (文春文庫)(←同作品を扱う他ブログへ)


【私的概略】
 後に、維新史の奇跡と呼ばれた坂本龍馬の生涯を、司馬遼太郎の視点から捉えた代表作。
 全八巻の第五巻。

 尊皇攘夷運動への逆風が激しさを増していきます。池田屋の変で多くの攘夷志士が新撰組によって討たれ、攘夷の指導的立場にあった長州藩は、蛤御門の変で多くの指導者を失います。巻き添えを食う形で、坂本竜馬の神戸海軍塾は幕命によって閉鎖され、船が欲しいという竜馬の夢も、風前のともし火。幕府を倒して新しい日本を、という願いも頓挫。停滞の時代を迎えました。

 登場する主な場面は、池田屋の変・蛤御門の変・西郷との出会い・長州征伐


【感想】
 前の巻から続く、尊王攘夷運動の退勢がとまりません。
 読んで思ったのは、縮むときは不運が続く、というのか、池田屋の変も、蛤御門の変も、負けた長州の側はあと少し、の場面で不運が起きている感じですね。
 竜馬もそう。他日の当幕勢力とするため、という理由は隠しつつも、攘夷志士を北海道に移住させるという計画を立て、八方頼み歩いてようやく計画実現する直前に、池田屋の変が起きて計画が潰れてしまう。神戸海軍塾も閉鎖されてしまう。この巻の竜馬には逆風が吹いています。


 しかし、そんな逆風の最中でも、新しい船を持つために薩摩藩出資の株式会社を起想し、西郷を説くなど、神戸海軍塾をなくしても船を持つ願いはあきらめません。迂遠と言われながらも、将来はその船(まだ一隻も持っていないわけですが)で以って倒幕をしようというわけです。
 その辺が、池田屋の変と対照的なように思います。池田屋の変は、攘夷活動の停滞に倦んできた、志士達の暴発だと私は捉えています。京都から幕府勢力を駆逐する計画の密談をするために、志士達が池田屋に集まったところを新撰組に急襲されるわけですが、巻中に登場する、「計画」の内容がイマイチ実現の難しそうな内容。やぶれかぶれになっていたのではないかとすら思われます。


 いや、竜馬は偉い。


【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…4/5点
読後に何かが残った感じがするか…3/5点(他の巻よりは、内容が薄いような気が)
繰り返し読めるか…3/5点(間をあければ、また読めるでしょう)
総合…3/5点


竜馬がゆく〈5〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎
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