京を支配する山法師たち 中世延暦寺の富と力

比叡山好きで年5回は登っている人へ、あるいは、不如意がいっぱいある人へ

  • ISBN(13桁)/9784642080552
  • 作者/下坂守
  • 私的分類/日本史(中世史)・史実を知る
  • 作中の好きなセリフ/

天仁元年(1108)三月三十日、新月の夜、京都の人々はかつて見たことのない風景を目のあたりにする。


京(みやこ)を支配する山法師たち―中世延暦寺の富と力(←同作品を扱う他ブログへ)


【私的概略】
 比叡山は京都の鬼門の方角にあり、鎮護国家の大道場です。現代の我々が比叡山に登れば、東塔・西塔・横川からなる多くの堂塔伽藍が鎮座し、一台宗教施設です。その昔は、最澄とか円仁とか、若き日の法然とかを輩出していますし、日本仏教の知識の最先端というイメージです。ところが、ところが、その比叡山を事実上運営していたのは、そういった宗教者というよりも、山法師の群れのような「衆徒」といわれる人々であったようです。


 この本には、そういう「衆徒」がどのように生まれ、どのように権力を握り、どのように京都の権力と強力・対立し、やがてどのように衰退していったかが、豊富な古文書の解析を下敷きにして、学術的に解説されています。
 宗教的権威を背景に、山法師が日吉神社の神輿を担いで京中に暴れ込んだ強訴の分類。宗教活動を経て集めたお金で金融資本となり、京都を金融面から支配していった経緯。室町幕府と協力して商人に対する徴税機関になった様子など、比叡山が現世に対して強勢を誇った時代が中心です。
 やがて、応仁の乱を経て宗教に対する人々の畏怖心が減退し、比叡山やその配下の寺の領地が武士に横領されていきます。僧兵・山法師衰退時代の入り口に至って本書は終了します。



【感想】
 まだ1回読んだだけなのですが。。。この本は繰り返し読み込まないと、内容を完全把握することはできません。上の私的概略を読んで分かったと思いますが、なんとなく内容がブレてますよね。概略の書き方が。一応、本書に書いてあった内容を載せているのですが、ちゃんと理解してないから、概略の書き方がウマくいきません。


 どっちかというと、本書のメインから離れた脇役的な、日本意外史情報の方が記憶に残りました(これも、まだ一読しただけだからでしょうか)。
 たとえば、足利義満の子、足利義持。地味なイメージで、華やかな足利義満に比べると何をやったのかよく分かりません。が、足利義持の治世は、朝廷や比叡山と協力して、意外なほど安定したものだったようです。飢饉のさなかに銀閣を造った足利義政は政治的に無能な印象が強いですが、治世の初期は、細川勝元とともに緊縮財政に取り組んだりして、一応頑張ってみたこともあったようです。
 他にも、山門使節なる、比叡山を領地とする守護大名のような存在があったとか、「比叡山」の「ひえい」の名の由来とか、、、ありふれた歴史本なんぞには内容が深過ぎて決して載らない知識がたくさんあって、面白かったです。


 ただ、、、本を買った動機は、比叡山の堂塔伽藍の来歴を知っておけば、比叡山を訪れた時に楽しかろうな〜。ということだったのですが、その辺は、あまり効果がありませんでした。



【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…3/5点(集中して読まないと内容がこぼれます)
読後に何かが残った感じがするか…3/5点(比叡山と京都の関係が分かった)
繰り返し読めるか…4/5点(繰り返し読まないと掌握できません)
総合…3/5点(比叡山好きなら4点)