死墓島の殺人

職場で冷戦状態の人へ、あるいは、何も考えずに読むことができる本を探している人へ

  • ISBN(13桁)/9784043943623
  • 作者/大村友貴美
  • 私的分類/ミステリ(金田一耕助風)
  • 作中の好きなセリフ/

「娘もそう言うの。『誰もいなぐなる』って。ほれ、子守唄通りだど!」
「子守唄?」男が繰り返した。
「ほら、『三人残して皆殺し』!皆、いなぐなるって」


死墓島の殺人 (角川文庫)(←同作品を扱う他ブログへ)


【私的概略】
 岩手県沖の離れ小島を舞台に起きた連続殺人事件。戦国の昔、とある大名家が幼君を奉じてこの島にたてこもり、激戦の末に家来の裏切りにあって滅亡しました。裏切った家来たちの末裔がこの島の住民たちで、島には今も、殺された主君や家来たちの呪いの伝説が残っています。
 滅亡した武将の隠し財宝。モウレン船なる幽霊船の噂。皆殺しを暗示するかのような子守唄。島の旧家の対立。横溝正史のような世界を舞台に、閉鎖社会で多くを語りたがらない島民相手に苦心しながら、藤田警部補は捜査を進めます。

 作者は、第27回横溝正史ミステリ大賞を受賞。「首挽村の殺人」では、古典的な内容ながら、地方の過疎問題という現代的な話題をにじませて評価されています。今作も、大体そんな傾向の内容です。



【感想】
 ウ〜ム。。。消化不良でした。
 いわくつきの島に残る怪奇な伝説。閉鎖的な島民相手の捜査。何か暗い過去を持っているような気配の主人公。捜査現場の対立。古典的な題材です。過疎問題やコンパクトシティ構想を巡る政争といった現代的な話題も盛り込まれてます。そこに登場人物たちの人生の悩みというものが絡んで、横溝正史の世界・社会派サスペンスの世界・まちづくりの話題とテレビドラマ風ストーリーがテンコ盛りです。どれもそれぞれ興味深いのですが、1つの推理小説の中に混在して全てが中途半端になっているような印象。


 個人的には金田一耕助シリーズの大ファンなので、また、本の紹介文にも「横溝正史の正当な後継者が描く」とあるのだから、もっとベタなくらい横溝正史な感じの題材に特化して欲しかったと思います。完全な金田一コピーと見られないように工夫したのだと思いますが。。。作者のデビュー作「首挽村の殺人」の方が、こなれていたと思います。


 それくらいしか感想が出ません。このように書くと、かなり悪い印象を持っているように思われるでしょうが、実は、そうでもないのです。ただ、印象が薄いというか、私的に引っかかる個所が無くて、感想が湧かないのです。そういう意味では、ディープじゃなくて敷居の低い内容と言えるのかもしれません。



【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点
読後に何かが残った感じがするか…1/5点
繰り返し読めるか…2/5点(何年か経って内容を忘れた頃に挑戦を)
総合…2/5点


死墓島の殺人 (角川文庫)
大村 友貴美
角川書店(角川グループパブリッシング) (2010-09-25)
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