ある閉ざされた雪の山荘で
ひねくれている人へ、あるいは、「嵐の山荘もの」が三度のメシより好きな人へ
- ISBN(13桁)/9784061859098
- 作者/東野圭吾
- 私的分類/ミステリ・嵐の山荘
- 作中の好きなセリフ/
今日も一日天気が良かったわねぇ。こういう時に限ってこうなんだから。明日もきっとそうよ。山の上の方だと、春スキーにはもってこいだわ。だけどあたしたちは出られない。今目の前にあるのはすべて幻。現実には周囲は雪、雪。全部真っ白。あたしたちは白い世界に閉じこめられているのよ」
【私的概略】
劇団のとあるセレクションに当選したメンバーが、信州のペンションに集められました。劇団の主催者から一堂の元に届いた指示は、「このペンションで舞台稽古をせよ」というものでした。
「状況設定を説明する。君たちがいるのは、人里から遠く離れた山荘である。実際には、最寄のバス停まで目と鼻の先だが、そういうものも存在しないと想定する。」「記録的な大雪だ。そのため外との行き来は完全に不可能な状態にある」実際には雪どころか晴天のもと、豪雪の山荘連続殺人「の設定」事件が幕を開けました。。。が、意外にも、演者の予想を裏切る禍々しいことが起きてしまうのです。
【感想】
実際には電話も通じているしバス停もすぐ近く。お天気は晴れのペンションを舞台に、大雪に降られて外部との交信不可能な山荘という設定で、連続殺人が起きるという設定の「舞台劇」が始まりますが、途中から読者の予想を大きく裏切る展開です。面白かったです。
斬新でした。「嵐の山荘もの」はワンパターンに陥りがち。それを打破するための「斬新な作品」は、これまた逆にマンネリなほど、たくさんの作品が登場しています。斬新が過ぎて好き嫌いが分かれたり、あるいは、もはや嵐の山荘とは呼べない作品になったり、「斬新さ」は諸刃の刃です。本作品は、嵐の山荘の基本線を堅持しつつ「斬新」です。好き嫌いが分かれることもなく、マンネリな感じもなく、なおかつ、読後感も極めて良好でした。
私は東野圭吾氏の作品は今作が初めてだったのですが、最初が今作だったのは幸せだったと思います。
【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点
読後に何かが残った感じがするか…3/5点(読後感良好)
繰り返し読めるか…4/5点(間を空ければ、可能。実際、再読したい)
総合…4/5点