美女と竹林

竹が好きな人へ、あるいは、口ばかり達者で肉体労働が苦手な人へ

  • ISBN(13桁)/9784334748951
  • 作者/森見登美彦
  • 私的分類/エッセイ(京都)・面白い本
  • 作中の好きなセリフ/

「その心配はない」
明石氏は断言した。「竹林ブームは来ない」


美女と竹林 (光文社文庫)(←同作品を扱う他ブログへ)


【私的概略】
 「夜は短し歩けよ乙女」で山本周五郎賞を受賞した森見氏の、竹林との格闘を(やや)ドキュメンタリータッチで描く。竹を刈りながら氏が振り返るのは波乱万丈の作家人生。崩壊しかけた学生時代からパッとしない大学院時代、ファンタジーノベル大賞受賞から山本周五郎賞受賞までの栄光時代。果てはMBCなる竹林経営のカリスマ社長になるという、気付けば妄想まみれの未来絵図まで物語られています。


 2007年から2008年まで、小説宝石の連載を1冊にまとめた本です。




【感想】
 笑えます。気楽に笑えます。いつもの大げさな表現で「竹が好き」「竹林清掃で環境保全」「竹を刈って筋肉ムキムキ」うわ言のように竹を刈る刈る息巻いて一向に竹やぶに足が向かないところが、微妙にヘコくて笑えます。それでも勇を鼓して(出版社の人まで巻き添えにして)竹を刈りに行ったりすると、その時の雰囲気がなんだか椎名誠氏のエッセイ風なのも面白いです。


 それでも時折、『私の学生時代はぐじゅぐじゅに崩れて終わっていたでしょう。人生に復帰できたかどうか分からない。というわけで、教授と竹にはたいへんな恩があるのです』という彼のシリアスな人生の話なんかも(わずかながら)時折登場したりして、彼は私より年下のはずなのですが、苦労人なんだな〜、と、エッセイならではの、森見氏の真相に肉薄することもできます。


 小説宝石の連載を文庫本化した本なのですが、全体を見渡すと、スタートは100点の面白さ。中盤より後ろが中だるみ、終わりは妄想が上々の出来。文庫本化にあたってくっつけた番外編は苦しみながら作った感じ。面白いところは満足ですし、出来ばえがもう一つなところは「執筆活動が忙しい中で締め切りに追われてエッセイ書くのに苦労している人気作家」の生々しい雰囲気を感じ取ることができて、それはそれで満足です。
 森見作品の仕上げに本作品を読むと、完全にファンになってしまいますね。




【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点(気軽なエッセイです)
読後に何かが残った感じがするか…1/5点
繰り返し読めるか…3/5点(時間を空ければ可能)
総合…4/5点(笑えました)

美女と竹林 (光文社文庫)
森見 登美彦
光文社 (2010-12-09)
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