やる気を科学する 意欲を引き出す「MSQ法」の理論と実践
モチベーションが右肩下がりの人へ、あるいは、5月病になる前の人へ
- ISBN(13桁)/9784309501413
- 編者/JTBモチベーションズ研究・開発チーム
- 私的分類/自己啓発・知的満足
- 作中の好きなセリフ/
MSQの大きな成果の一つとして、昇進、昇給や報酬のアップは、あまりやる気を上げる材料にはならず、むしろ自分に合った仕事をしているという気持ちが、やる気を引き出すことがわかった。これはいままでの常識をくつがえし、多くの経営者や管理職を当惑させたのであった。
【私的概略】
どうすれば「やる気」が出るのか。
JTBモチベーションズ研究・開発チームが、多くの業種、企業規模の社員相手に意識調査を行い、「やる気」の指標化した結果、日本人のやる気の要因(モチベータ)には、
- 「適職」
- 「プライベート」
- 「自己表現」
- 「環境適応」
- 「環境整備」
- 「人間関係」
- 「業務遂行」
- 「期待・評価」
- 「職務管理」
- 「報酬」
- 「昇進昇給」
という11の要因があることが分かりました。
本書は、11の要因を測定して数値化する分析システム、MSQ法のダイジェスト版です。
【感想】
10代後半以降の、全ての人にお勧めです。
やる気が出ない人は、自分(あるいは環境)の何が原因でやる気が起きないのか、
すごくノリノリになってる人は、同じく何が原因でノリノリなのか、
それを客観的に捉えることができるようになります。
本書の最初のほうに、自分のやる気を分析する簡単なツールがついています。やる気が上がる要因は、人によって、または状況によって異なります。ツールを使うことで要因を特定し、やる気が低い時は、やる気を上げる方法を示唆し、やる気が高い時は、負のスパイラルへ陥らない予防策を示唆してくれます。
面白いのは、やる気の要因は11あるのですが、それぞれ、低いのはマズいですが、高すぎるのも落とし穴に嵌まりやすい、ということ。例えば、「人間関係が良い」というのは、やる気が上がる要因ですが、人間関係が良過ぎると、それが「ぬるま湯」体質につながる、とか、そういうことです。
諸行無常。おごる平家も久しからず。警戒すべきは低いだけ時だけでなく、やる気が高い時も、来るべき凶兆に備えなければならない、という観点は、さすがモチベーションのプロフェッショナルが書いた本です。
やる気をマネジメントする本を読む人というのは、自分のことではなく、部下のやる気を上げる方法を模索している人もいます。本作も、そんな人向けに、別に2個、章を立てて解説しています。ツールを使って、読者のマネジメント・スタイル(部下のマネジメントに対する傾向)を分析し、それぞれの症状にアドバイスをくれますが、(分析結果は大体予測がつくとはいえ)自身を客観的に見つめなおす契機になって、頭を冷やしてくれますね。
「やる気の上がり下がりは、本人だけの問題ではない」というのが本書の特徴。読んでて印象が強かったのは、やる気の要因の一つ、「プライベート」です。これは、プライベートで息抜きできている、という単純な要素だけではなく、家庭が自分の仕事を理解してくれているという感覚が「やる気」を上げるという、「そう言えばそうね」的なお話。そういう意味では、働くお父さんを支える奥様方にも必要な知識。だから本書は、10代後半以降の、全ての人にお勧めなのです。
【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…3/5点(多少頭を使いますが、読むことはできます)
読後に何かが残った感じがするか…4/5点(自分の「やる気」を客観視できるようになりました)
繰り返し読めるか…4/5点(むしろ、繰り返し読んで身につけたい内容)
総合…4/5点(「やる気」を見る目が変わりました)