『アリス・ミラー城』殺人事件

新本格のワンパターンさに疑問を持ち始めてる人へ、あるいは、アガサ・クリスティのあの名作が好きな人へ

  • ISBN(13桁)/9784062761468
  • 作者/北山猛邦
  • 私的分類/ミステリ(本格)・孤島の殺人
  • 作中の好きなセリフ/

ワシのちょっとばかり灰色をした脳細胞が危険信号を発しておる。それはもうやかましいほどにな。


『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社文庫)
北山 猛邦
講談社
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【私的概略】
 秋田県沖の無人島、江利ヶ島。ここには、アリス・ミラー城なる西洋風の城があり、鏡だらけのこの城には、謎の鏡「アリス・ミラー」なる鏡があるといいます。「アリス・ミラー」を探すべく集められた名探偵たち。彼らが一人、また一人、遊戯室に意味深に置かれたチェス駒のように、殺されていきます。


 消えては現れる城内の扉。建築意図の不明なアリス・ミラー城。疑惑に蝕まれる探偵たち。島に降り注ぐ酸性雨と黒い雪が世紀末的な雰囲気をかもし出します。




【感想】
 もちろん、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』的な世界。
 登場する探偵たちも、西洋の名作に登場した名探偵を思わせる雰囲気の人たち。
 セリフの端々にも古今の名作への思い入れが滲んでいます。
 登場する舞台も、鏡だらけの有り得ない西洋風のお城。
 挙句、探偵小説の十戒じみたものから、素人には理解困難なミステリ芸術論まで出現して、あぁ、この作者は本格ミステリが好きなんだねぇ、と思いました。


 しかし、しかしです。ストーリーの最後でトリックが明かされるわけですが、そのトリックが、、、どうにも解せぬ。動機も、あまりに現実感が無くて全く理解ができぬ。


 動機に現実感が無いのは、ストーリー全体に、まるで空想世界の出来事のような美しさをも漂わせて、これはこれでありかもしれません。おそらく、この本の作者は古今のミステリを読み込み、それらの名作を乗り越えて新しいミステリを作ろうとしているのでしょう。この動機は、その産みの苦しみだと思えば、人によっては強く賛同するかもしれません。
 しかし、トリックが意外すぎて、私には納得できなかった。意外すぎる、ということについては、読み終わった後すぐに再読して自分の読み落としを確かめようとしたくらいです。




【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点
読後に何かが残った感じがするか…3/5点(大きな疑問と軽い混乱が)
繰り返し読めるか…4/5点(結論を聞いて2回目をすぐに読み直しました)
総合…3/5点(評価が大きく割れるのでは)

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