厭魅の如き憑くもの

憑き物とかの話が好きな人へ、あるいは、よく「君はなにか持ってるね〜」と言われる人へ

  • ISBN(13桁)/9784062763066
  • 作者/三津田信三
  • 私的分類/ミステリ(金田一耕助風)・憑き物
  • 作中の好きなセリフ/

怖いからこそ襖の隙間から顔を逸らせんようになって、でも何も見えんな思うて、ふと隙間の一番上を見るとな、そこから自分を見下ろしとる目が覗いとって……


厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)
三津田 信三
講談社
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【私的概略】
 山村で対立する2軒の大地主。村の人たちはどちらの味方かで「白」「黒」と分けて呼ばれています。黒の地主は、いわゆる憑き物筋の家系と呼ばれ、白の地主から忌み嫌われていますが、時代の流れ、憑き物信仰自体をナンセンスなものと捉え、それを無くそうという気風があらわれつつあります。


 白と黒の対立、憑き物信仰に反発する人たちと固執する人たち、それに加えて、村の中を跋扈する物の怪の禍々しい気配と神隠しの伝承。。。
 連続殺人は、何が原因で起きたのか?放浪の怪奇収集作家、刀城言耶が金田一風に解決に乗り出します。




【感想】
 刀城言耶シリーズは、ミステリーとホラーの融合が、その特色。今回もホラーぽい挿話やトリックが、本筋のミステリーを盛り上げます。巫女が払った憑き物を川に流す儀式の際に起こった怪異なんかは「これを合理的解決させるのか。。。大丈夫かな」と思えるほど妖しげな気配。本作もシリーズの持ち味を充分発揮させていて、楽しめました。


 しかし今回は、他の作品と比べてホラー部分がミステリから少し離れ気味、ミステリの本筋に貢献しないホラー部分が大きく、単に怖い雰囲気を盛り上げただけの話の割合が多かったです。
 ただし、ミステリが主でホラーが従だという思いで読むと(ホラー部分は合理的に解決しないので)消化不良になります。どちらも対等で良いと思って読めば、これはこれで「両者の融合」と言えるのかもしれません。


 面白いことは面白いんですよ。トリックの内容とか意外性があって。ただ、「この消化不良な感じはなんだろう」というような物足りない感じが、私の中で、刀城シリーズ群の中でインパクトの薄い作品に位置づけさせているのです。
 私の好みが偏りすぎてて、それに合わないだけなのかな。。。




【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点
読後に何かが残った感じがするか2/5点(そんなでもない)
繰り返し読めるか…4/5点(再読して作者の工夫を見つけるのも楽しい)
総合…4/5点(3ないし4。トリックは意表をつかれた)

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