ボディ・メッセージ
現実に奇妙な事件とか起きたら週刊誌買って熟読までしてしまう人へ、あるいは、本格推理ミステリとか面倒くさくて読めない人へ
- ISBN(13桁)/9784488024642
- 作者/安萬純一
- 私的分類/ミステリ(消失する死体)・めんどくさくない本
- 作中の好きなセリフ/
「一人くらいは、常人を超越した頭脳を持っていて欲しかったのに、それも殴られてパーになっちまった」
「−−そういやあ、肉体を超越した事件って感じですかね。今度のは」
【私的概略】
第二十回鮎川哲也賞受賞作。
アメリカ、メイン州にある探偵事務所、ディー・デクスター探偵事務所に寄せられた奇妙な依頼の電話は、「探偵を2名、とある屋敷で泊まって欲しい」という、それだけの内容でした。
指定されたのは大昔の怪奇映画のような住人と屋敷。酒を出されて熟睡した2人の探偵が目覚めると、下の階には血の海と、住人の切断死体が出現していました。
消える死体、混乱する警察と探偵事務所、登場する名探偵、推理小説の基本ルートをたどって、事件は解決に向かいます。
【感想】
始めにドーンと大きな謎が現れて、その後細かい謎が積み重なって迷路状になっていき、読者の興味が高潮したところで名探偵が登場し、目の前を覆っていた謎が少しずつ晴れていく。オーソドックスなスタイルがバランス良く守られています。続きが気になってどんどん読ませてくれます。
本格推理小説にありがちな「謎解明のためにロジックを羅列して読者を飽きさせる場面」も無く、したがって冗長な表現も無く、ストレス無しに解決につながっていきます。入門編的な本格推理小説、という印象を持ちました。
日本人作家の書いた舞台も人物も外国なミステリなんてのは一見慣れない感じ。しかしながら、アメリカ人作家の翻訳小説と言われても違和感無い書きぶりです。ただ、アメリカらしい風景描写なんかはありません。舞台を外国にしたのは、非日常を強調することが目的だったのではないかと思いました。
いや〜、さすがは鮎川賞受賞作です。
不満を挙げれば、ネットに載っていた本の紹介文とのギャップ。「屋敷から消失する切断死体」というキャッチコピーで、実は別の屋敷に移されていた、とか、なにかその辺で大胆なトリックがあったとか、私はそういうのを期待して本書を購入したのですが、消失自体は大した謎ではありませんでした。
作品そのもののせいではないのですが、自分が抱いていた期待とズレた、ということで減点です。
【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点
読後に何かが残った感じがするか1/5点
繰り返し読めるか…2/5点(相当間を空ければ、また読めそうです)
総合…3/5点(3、ないし4)