山魔の如き嗤うもの(やまんまのごときわらうもの)

怪奇な舞台のミステリが好きな人へ、あるいは、金田一耕助悪魔の手毬唄風な世界が好きな人へ

  • ISBN(13桁)/9784562041510
  • 作者/三津田信三
  • 私的分類/ミステリ(金田一耕助風)・見立て殺人
  • 作中の好きなセリフ/

その光景はまるで、朝食を摂っている最中の家族が、いきなり忽然と消え失せてしまった……ように見える。


山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)
三津田 信三
原書房
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【私的概略】
 怪奇収集作家、刀城言耶は、中学校の英語教師から相談を受けます。
 彼の郷里で今も行われている成人参りの儀に参加たところ、山中で次々と妖怪じみた怪異に出くわした挙句、忌み山の正体不明な一軒家に逃げ込んだところ、そこに住んでいた家族も密室で消失してしまった、というのです。
 「山魔に呼びかけられても、けっして答えてはならない。山魔に嗤われて、お終いになってしまう」
怪異に包まれた忌み山に伝わる、妖怪「山魔」の伝承。英語教師は怪異に怯えて仕事も手につきません。


 怪異を調査すべく、刀城言耶は奥戸の地を訪れますが、のっけから殺人事件に巻き込まれます。地元に伝わる六地蔵の手毬唄の通りに、繰り返される連続殺人。犯人は誰か。そして、忌み山で起きた怪異譚は、どこまでが犯人の仕業で、どこまでが山魔たち妖怪の仕業なのか。
 「合理的解釈ができないならば怪異は怪異としてそのまま認めよう」異色なスタンスの異色探偵話が、異色な結末にたどり着きます。




【感想】
 怖いですな。いきなり怖い。英語教師が成人の儀で山中に迷い、亡霊じみた老婆や、正体不明な山魔の如きものに呼びかけられたり、登場した謎の全てが合理的に解決されるとは限らない(刀城言耶シリーズの特徴です)だけに、怖いですね。
 メインの事件よりも、山中の怪異の正体の方が気になるくらいです。


 妖怪伝承が残る忌み山で事件が起こって、妖怪「山女郎」とか、怪しい位牌を担がされた男の遭遇した恐ろしい話とかが絡んで、実はそれらの「怖い昔話集」の中に事件解決のヒントがあったりして、妖怪話が単なる盛り上げ役ではないのも、無駄がなくて好印象です。


 刀城探偵シリーズの特徴、探偵が最後の最後で謎解き結論をひっくり返してしまうシーン。毎度のことなので正直疲れてしまうのですが、今回は許容範囲内だと思います。ラストの犯人は、(掟破りではない範囲で)意外でした。




【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点
読後に何かが残った感じがするか3/5点(読後感も良い)
繰り返し読めるか…3/5点(間を空ければ、可能)
総合…4/5点(4、ないし5。迷いますな)

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