凶鳥の如き忌むもの

孤島の殺人が好きな人へ、あるいは、金田一耕助悪霊島風な世界が好きな人へ

  • ISBN(13桁)/9784061824973
  • 作者/三津田信三
  • 私的分類/ミステリ(金田一耕助風)・孤島の殺人
  • 作中の好きなセリフ/

そこに真っ赤な目玉が、あったんじゃ。こっちを凝っと覗いとる、赤い赤い目ん玉が……。


凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)
三津田 信三
講談社
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【私的概略】
 怪奇収集作家、刀城言耶は瀬戸内の孤島で行われる「鳥人の儀」に参加します。豊漁を祈って巫女が「大鳥様」なる守護神と一体化するという、いまいち正体のよく分からない、文字通りの秘儀ですが、18年前、この秘儀に参加した8人のうち7人が、一晩にして行方不明になるという未解決事件が起きています。


 今回の儀式を行う巫女は、18年前の事件唯一の生き残りです。その巫女が、言耶たちが見守っていたにもかかわらず、密室状態から姿を消してしまいます。
 「儀式は失敗、中空の鳥女(悪い妖怪)に用心すべし」
 謎のメッセージが残されました。
 巫女は死んでいるのか、生きているのか?どうやって姿を消したのか?18年前の事件との関連は?孤立無援の孤島で、犯人探しが始まります。




【感想】
 今回も、ミステリの感想なので、ネタバレしないように慎重に行きますよ。
 怖いですな。18年前の事件、妖怪鳥女(とりめ)と思しきモノに襲われて7人が次々と姿を消していく様子を、唯一生き残った幼い巫女が語るのですが、、、怖い!
 メインの事件よりも、18年前の真相の方が気になるくらいです。
 (私の大好きな)警察の介入できない孤島で事件が起こって、舞台は神社の拝殿で、その神社は現実には有りそうにない奇抜な設計で、18年前の事件はおっかなくて、怪奇なムードが、いやがおうにも盛り上がります。
 そのムードを最後まで維持しきって、謎解きに至った結末も、ほどよく意表を突いてます。出来ばえの良い作品でした。


 出来ばえが良かった分、不満なところが逆に目立ってしまうもの。良作と判定しつつも、敢えて並べてみますと。。。


 メインの事件は変形密室もの。本格ミステリらしく、探偵役が色々なパターンをしらみつぶし風に検討していくあたりは、(本作に限った話ではないんですけど)冗長で飽きますね。怪奇ムードに包まれている時だけに、論理の羅列が逆に目立ってしまいます。もっとも、「これさえなければ、、、いやいや、これが無かったら本格ミステリじゃないでしょう」というような「あちら立てれば、こちらが立たず」状態ではあります。


 もうひとつは、刀城探偵シリーズの特徴、探偵が最後の最後で謎解き結論をひっくり返してしまうシーン。作品によっては、あまりにヒックリ返り過ぎて読者である私が途中で振り落とされてしまうことも、しばしば。今回も、最終的な結論そのものは、18年前の事件の謎ともキレイにつながっていて、なおかつ意外性があって良かったと思います。しかし、私は途中で振り落とされたので、謎解きの途中が印象薄になってます。
 ちょっとドタバタしてますね。とはいえ、「そんなにヒックリ返さなくても、、、いやいや、これが無かったら刀城シリーズじゃないでしょう」というような「あちら立てれば、こちらが立たず」状態ではあります。


 そして、読後感。どんなに舞台設定や謎が奇抜でも、謎解きで明らかになった犯人の心理や犯行方法に違和感を感じると、読後の印象が悪かったり、逆に、何の後味も残らない水増しビールみたいになって台無しです。そして実際にはそういう作品が多いと思うのですが、本作は悪くなかったです。




【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点
読後に何かが残った感じがするか3/5点(読後感も良)
繰り返し読めるか…4/5点(謎解き途中で振り落とされたので、逆に、間を空けずに再読可能)
総合…4/5点(色々不満言いましたが、◎なのは間違いないです)

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