のうだま やる気の秘密

やる気が出ない人へ、あるいは、自分の三日坊主っぷりがイヤになっている人へ

  • ISBN(13桁)/9784344015951
  • 作者/上大岡トメ・池谷祐二
  • 私的分類/自己啓発・教養
  • 作中の好きなセリフ/

そして特筆すべきは、マンネリ化には、やめちゃうネガティブなケースと、ずっと続けていくポジティブなケースの両面があるということ。


のうだま―やる気の秘密
上大岡 トメ 池谷 裕二
幻冬舎
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【私的概略】
テーマは、
「三日坊主」と「やる気を継続させる4つのスイッチ」の関係について
以下は要旨の抜粋です。


●第1章「からくり編1」 P13〜50
 脳は、もともとあきっぽくできている。三日坊主は生きていくためにそもそも必要なことで、脳がわざとマンネリ化を起こしている。
 やる気は、じっと待っていても出てこない。カラダを動かして、初めて出てくるもの。
 やる気がでるのは、「淡蒼球」という脳の部位から。この部位の活動が活発になると、やる気も高まる。
 「淡蒼球」は自分の意志では動かせないが、連動する4つのスイッチは自分の意志で動かすことができる。スイッチを入れることで「淡蒼球」を活性化させる。それが、三日坊主を克服するコツ。


●第2章「からくり編2」 P51〜94
淡蒼球」を活発に動かすための、4つのスイッチ。


◎スイッチB:Body
内容)
カラダを動かすことでスイッチが入る
理屈)
カラダが動くことで運動野(大脳皮質の領域の一)が動いて「淡蒼球」も連動する


◎スイッチE:Experience
内容)
いつもと違う場所に行ったり、違うことをすることで入るスイッチ
理屈)
海馬(新しい経験をした際に、記憶を作る場所)が動くと前頭葉(スイッチI)にスイッチが入り、「淡蒼球」が動く。
補足)
目線を変えてちょっとでも違うことをしてみると効果的。いつもやっていることでも、場所を変えたり、目の付け所を変えたり、違ったことをすると、やる気が起きる(ex.学校の席替え)。


◎スイッチR:Reward
内容)
ごほうびを用意することで、入るスイッチ
理屈)
テグメンタ(脳の快感を生み出す場所)が刺激されると「淡蒼球」が動く。
→キモチいいことで刺激される「テグメンタ」は強いパワーを持っていて、続けることの原動力となる。
補足)
「ごほうび」には有形無形色々あって、「達成感」もごほうびになる。
「ごほうび」というのは現状とゴールの差。この差を乗り越えたとき、快感を得られる。わざとマイナスなところからスタートして、もとに戻すだけでも、達成による快感が得られる。(ex.お化け屋敷を最後まで通り抜けた時の達成感)


◎スイッチI:Ideomotor
内容)
「なりきる」「強く思い込む」ことによって入るスイッチ
理屈)
前頭葉(感情・注意・思考などの精神作用を支配する)が活動して「淡蒼球」も活性化する
補足)
「あこがれの職業に就きたい」と強く念ずることで、その職業の情報に敏感になり、また、努力も続けられる=本当に実現する



●第3章「やってみよう編」 P96〜140
3日坊主にならずにやる気を維持し続ける方法について


1.最初の目標は小さくする(スイッチR)
→達成感を繰り返して、習慣化する

2.腹八分目でやめる(スイッチR)
→次回が待ち遠しくなる

3.ごほうびを用意する(スイッチR)
→ごほうびを得た時の自分を想像する

4.同じ時間にやる(スイッチB/E)
→習慣化・時間が来ると、カラダが準備するようになる

5.カタチから入る(スイッチB/E/I)
→なりきることによって、どうすれば本当になれるのか、
 練習方法や食生活等を分析し始める。
 脳も「そういうもんだ」とだまされて、あまり苦にならない

6.図々しい妄想をする(スイッチI)
→下心も立派なモチベーション。やがて、次の具体的な目標が見えてくる
ex.「英語がしゃべれると、モテるかも」という最初の動機が、
 「仕事でも使えるようになりたい」という具体的な目標に向かっていく

7.友達をまきこむ(スイッチE)
→何かをやり続けているとき、(取り組むものが同じじゃなくても)
 仲間がいると続き易い

8.ほめてくれる人を、用意する(スイッチR)
→認めてくれる人がいると、やる気が出る
 ただ、ほめられることが当たり前になると、今の自分に満足してしまう。
 定期的にテストを受けたりして、客観的に自分の実力が分かるようにする。

9.続かなくて当たり前と思う(スイッチE)
→「脳はマンネリ化するものだ」ということがあらかじめ分かっていれば、
 落ち込んだりパニックになったりしない

10.身銭を切る(スイッチE/R)
→「逆ごほうび」=「もとを取り返す」も、モチベーション

11.今やっている別の習慣(ex.歯磨きとか、風呂とか)にドッキング(スイッチE)
→「絶対にやること」にくっつければ、習慣化し易い

12.人前でやってみる(スイッチB)
→「恥」が次の目標を決める

13.気が乗らなくても、とにかくその場に行く(スイッチB)
→スイッチB・現場の雰囲気に飲まれることで、やる気が出る

14.移動中にやる(スイッチB)
→いつもとは違う風景・環境でやる気にスイッチが入る

15.誰かを喜ばすためにやる(スイッチE)
→誰かのためだと、もう少しがんばれる

16.はじめのキモチを思い出す(スイッチE/R/I)
→はじめのキモチは、後々救急箱になる



【感想】
 池谷祐二さんは、脳に関する研究で注目されている東大の先生です。やる気をコントロールする方法について模索している時、さる会社の部長さんが彼の脳に関する講演に感心して「今年面白かった2つの講演の1つ」と褒めていらっしゃったのを聞き、さっそく購入しました。


 彼の著作は多数ありますが、多くの場合は自分で筆を執るのではなく、自分はアイデアや話題の核になる部分を出して、実際の著作活動は共著者(今回の場合は上大岡トメさん)に任せる、という方式を採っています。それ故の著作多数ですが、「自分は物を書く能力は高くない、だから、アイデア部分の担当に専念し、文章化は、書く能力の高い人に担当してもらう方が効率が良い」と明言しています。
 賛否あるかもしれませんが、合理的に割り切ってて私は好きです。こういう割り切り方をする人は大概、話の上手な人が多いようです。


 共著者、上大岡さんの失敗話や、池谷アイデアから「そういえば」と連想する内容が我々に身近で、油断すれば小難しくて途中でマンネリ化しかねない内容を面白くまとめています。ページ数が少ないので、興味が持続している間に読了できるというのも、小気味良い印象です。
 私は、この本から組み立てた方法で、ジョギングを継続し、当初は1キロほどしか走れなかったのを、現在7キロまで延ばすことができました。



【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点(上大岡さんのマンガが挿絵風に展開されて読み易いです)
読後に何かが残った感じがするか…5/5点(三日坊主をコントロールできます)
繰り返し読めるか…2/5点(2,3回読めば一通り頭に入ります)
総合…4/5点(勉強になりました)

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