鹿男あをによし

夏目漱石「坊ちゃん」が好きな人、あるいは、無鉄砲の人へ

  • ISBN(13桁)/9784344414662
  • 作者/万城目学
  • 私的分類/娯楽小説・面白い話(読み出すと停められない)
  • 作中の好きなセリフ/

しかし、冗談もいい加減にしろというおれの言葉に、堀田は動じる様子もなく、昨日も母が駅前のビブレに鹿に乗って買い物に行った、などとやけに現実味のある例を挙げてくる。


鹿男あをによし (幻冬舎文庫)(←同作品を扱う他ブログへ)


【私的概略】
 一時的とはいえ、大学の研究室を体よく追い出された「おれ」は、奈良の女子高に教師として赴任します。
 ある日突然、奈良公演の鹿から渋い声の人間言葉で話しかけられます。鹿の曰く「日本に大地震を起こす大ナマズがいて、それを封じる神宝が存在する。神様の指図で、その神宝を運ぶ役目を、「おれ」が負うことになった」とのこと。
 わけの分からない指示に戸惑う「おれ」。しかし、事情があって断ろうにも断れません。神様の指令を無事に果たし、日本を大地震から救えるのか、いやその前に、神宝とは何か、どこにあるのか? タイムリミットが刻々と迫ります。


 直木賞や、本屋大賞の候補作になり、テレビドラマ化もされた作品です。



【感想】
 一度読み始めると、先が気になって途中で止められなくなるタイプの本です。というわけなので、ストーリー説明はほどほどのところでやめておく、として。。。


 上の概略説明を読めばすぐ分かりますが、ストーリーは破天荒です。冷静に考えれば「なんだこりゃ?」という内容。しかし、よくある破天荒話が、読者を呆れさせたり、ひかせたりして、特定マニアックなファンしか獲得できないのに対して、万城目氏の作品は、面白い、友人や奥さんと回し読みしたくなる面白さです。


 ひとつ、作者や出版社のために案じるのは、ストーリーだけでなくて、題名も何だか変わっているということ。「鹿男あをによし」なんて題名から、本作の内容は少しも想像がつきません(鹿が登場しそう、ということくらいしか)。
 この本のような面白い本を読みたいと思っている人が本屋に来た時、この題名を見て「自分の読みたいものと一致しそう」という風になるのか、本が売れないと困る立場としては、気になります。数十万部売れたそうですが、もっと売れても良いような面白さなんですけど。


 やや余計なお世話な心配はさておき、この本は読んだ瞬間から、夏目漱石「坊ちゃん」と重なります。生徒の一人が堀田という名前ですが、「坊ちゃん」の登場人物とまるっきり同じ名前ですね。他にも、ややぶっきらぼうな語り口や、関東の人間が箱根の西へ教師として赴任するところや、その他細かい設定が、「坊ちゃん」をイメージさせて、さりとてパロディというほどでもなく、、その辺りも好印象でした。



【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点(面白い本ですから)
読後に何かが残った感じがするか…4/5点(面白かったです)
繰り返し読めるか…3/5点(時間を空ければ)
総合…4/5点(限りなく5に近い4です)


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万城目 学
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