怪談実話系 書き下ろし怪談文芸競作集

怖い話の苦手な人へ、あるいは、不気味な話が好きな人へ

  • ISBN(13桁)/9784840123471
  • 作者/京極夏彦安曇潤平 他
  • 私的分類/怖い話(短編)
  • 作中の好きなセリフ/

ただし、そこで語り出される物語は、虚実皮膜のリアルサイドに楔を打ち込み、亀裂を走らせ、われわれの眼前にある現実(リアル)を震撼せしめるものでなければならない


怪談実話系 書き下ろし怪談文芸競作集 (MF文庫ダ・ヴィンチ)(←同作品を扱う他ブログへ)


【私的概略】
 日本で唯一の怪談専門誌と謳う『幽』(年数回発行)の執筆陣10人による競作集。まぁ、短編集です。
 それぞれ1言つづ概要と感想を述べさしてもらいますと、以下の通り。


1.『成人』京極夏彦
 ある家に伝わる雛人形に関する怪奇話。不気味でした。

2.『見知らぬ女』福澤徹三
 水商売の世界に潜む闇。水商売の世界になじみが無いので、私的には盛り上がりに欠けます。ラストの急展開が○。

3.『顔なし地蔵』安曇潤平
 山中の地蔵にからむタタリの話。怖いね〜。

4.『茶飲み話』加門七海
 近所の家が、庭に生えている古木を切りたおしてから不幸が起きる話。ありきたりな話を、巧く構成しました。さすが。

5.『怪談BAR』中山一朗
 怪談BARに集う人たちが話す、怪談話の数々。短編内で、さらに細切れにしてるので、1話1話がすごく短い。その分キレが良いです。実話の怖い話を聞いてるような感じです。

6.『リナリアの咲く川のほとりで』小池壮彦
 防空壕に隠れ住む謎の人たち。幻想譚ですね。なんとなくよく分からないところもありました。

7.『つきまとうもの』立原透耶
 幽霊につきまとわれる話3つ。水色のトレーナーの男の幽霊に女の子がつきまとわれる話が、気味悪かった。

8.『後を頼む』木原浩勝
 ある家で、おじいさんが死んでから多発する怪事。何が原因だったのか、という話。瓦が一斉に落ちる、という辺り。良いできだ思います。

9.『顳顬(こめかみ) 蔵出し』平山夢明
 怪しい話5つ。神様のお供えをつまんで怪力を得る話とか、日本昔話(の現代版)風のが面白かったです。

10・『美しく爛(ただ)れた王子様と麗しく膿んだお姫様』岩井志麻子
 おかしな男の話1つ。女の話1つ。幽霊とか怪異は登場しません。気持ち悪かった。

11.幽 文庫通信
 雀野日名子のエッセイ(?)が軽妙で笑えます。



【感想】
 血がドバドバ出る、ホラーな話ではありません。そういうのではなくて、いわゆる「怖い話」です。そういうのを目的にして買ったので、ちょうどはまりました。幽霊や妖怪が出たり、原因の分からない(ていうか何かのタタリ的な)怪しい事件が起きたり、心霊的なゾっとする場面があったり、、そういう話です。あ、でも、小さい子の親である私は、「昔、子供が死んじゃって」とかそういうのはカンベンです。そういう話が無かったのも好印象。


 個人的には、安曇潤平の『顔なし地蔵』、中山一朗の『怪談BAR』が、私の求めるところの「怖い話」でした。『顔なし地蔵』は山がらみのお話。山+怪異譚は、私にとって堪えられない組み合わせ。安曇潤平の他の作品も読んでみようと思います。
 京極夏彦も良いですね。さすがは直木賞作家。楽しめました。しかし、短編ゆえにか、怪奇話だから当然なのか、謎が解明されずに終わってしまい、気になってしょうがない。京極堂を呼んで下さい、と思いました。



【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点(読めます)
読後に何かが残った感じがするか…3/5点(興味深い作家さんを発見できた)
繰り返し読めるか…3/5点(2,3年後にもう一度)
総合…3/5点