もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

エラくなりたい人へ、あるいは、ドラッカーのことをよく知らない人全般へ

  • ISBN(13桁)/9784478012031
  • 作者/岩崎夏海
  • 私的分類/名著関連・敷居の低い本・面白い本
  • 作中の好きなセリフ/

事実、うまくいっている組織には、必ず一人は、手を取って助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(←同作品を扱う他ブログへ)


【私的概略】
 高校野球の女子マネージャーが、ドラッカーの名著『マネジメント』を読み、立派なマネージャーになるべく、その本に書かれている内容を真摯に実行していった、というお話。ドラッカーは、多くのマネジャー(経営者・管理者、要は会社のエラい人)から取材し、会社や組織をマネジメント(経営・運営)していく方法論を考えた人(だそう)です。彼によって書かれた『マネジメント』という本は、マネジメントに関するロングセラーとなりました。


 野球部のマネージャー(いわゆる雑用係的なポジション)が、勘違いしてマネジャー(組織のトップ)のあり方に関する本を読んで、勘違いしたまま「マーケティング」を行って、「野球部の顧客とは何か」をあぶりだし、それに基づいて野球部という組織の目的を定義します。専門家(監督)の意見を聞きながら戦術の「イノベーション(革新)」に取り組み、入部希望者の増大に対しては「規模の不適切さ」の問題に取り組み、、、という具合に、本物の経営者とてこんなに真面目にはやりません、というくらいに取り組んでいきます。


 マネージャーに指揮された都立高校の野球部は、激戦区、西東京地区の予選を勝ち抜き、甲子園に出場することができるのでしょうか? というお話です。



【感想】
 ドラッカーだ、なんだと言ってますが、そんな小難しい話を抜きにして面白い、スポーツ感動小説青春派、ともいうべき内容でした。
 発売当初から話題から話題を呼んで順調に売り上げを伸ばし、しまいには本家ドラッカーの『マネジメント』の大幅売上げ増まで呼び込みました。某老舗書店では「普段は月10冊ペースの売上げが、月100冊にまで伸びた」とのこと。いかに本書が面白かったか、ということですね。


 しかしながら個人的な感想では、そんなに難しい経営者論カルロスゴーン風ともいうような内容はありません。さりながら、そこに登場するドラッカーの指摘とやらは、ありきたりな誰でも想像できる内容ではない、という、ドラッカーに対する興味が森々と沸いてくる展開も○です。
 普通の高校が甲子園出場に行くという破天荒な物語りは、話の途中でマンネリ化してくるというのもよくあることです。本書は、そうなりかける直前で結末を迎えました。
 面白い本を書く力量のある人なんだなと思いましたです。



【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…4/5点(難しくないので、軽く読めます。ただ、表紙や挿絵の絵柄が、おじさん的にはキツい)
読後に何かが残った感じがするか…3/5点(すいません。案外残りませんでした)
繰り返し読めるか…4/5点(間さえあければ、軽いので繰り返し読めます)
総合…4/5点(全体に面白かったです。教養というよりも娯楽面がメインの作品です)