ロード&ゴー (LOAD & GO)

緊急事態の人へ、あるいは、軽くハラハラしたい人へ

  • ISBN(13桁)/9784575236767
  • 作者/日明恩(たちもりめぐみ)
  • 私的分類/娯楽小説(日本)・面白くて止まらない本
  • 作中の好きなセリフ/

「このままだと、あんたの家族を助けることが出来ない。どれだけ謝っても、謝りきれないのは判っている。でも」
−せめて、あなただけは助けたい。


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【私的概略】
 超熟練の消防車機関員、生田。学級委員長とあだ名される優秀な救急救命士、森。温厚な救急隊隊長、筒井。3人は帰所途中で喀血している男を収容し、事態を重く見た筒井はロード&ゴー(非常事態宣言)を宣言。急ぎ病院へ搬送しようとします。
 この病人収容がきっかけで、3人は奸悪な身代金目的誘拐事件に巻き込まれてしまいます。犯人の指示で走り続ける救急車はいつ燃料が尽きるのか?いやいや、そもそも救急車を狙った誘拐犯の目的は何なのか?



【感想】
 題名を見たときから、フランスのお笑い映画「TAXI」を連想してました。身代金目的誘拐犯に脅かされ、ひたすら救急車を走らせるのですが、かの仏映画のように悪党団とハイスピードカーチェイスをするわけでもなく、救急車の法定制限速度80キロで走行です。


 じゃぁ、車がスピード出さなきゃストーリーもスピード感が無いのか、といえば無論そんなことは無いわけで、全ては状況設定が読者を焦らせることができるか、その辺次第なのです。
〜以下、本の内容(10%程度)に関する話が登場します〜
 この本でいえば、犯人が設定した制限時間内に目的地につかなければならないのに、救急車だから法定速度を守らなければならない、とか、渋滞が邪魔する、とか、マスコミの中継車両が前後左右に寄りたかって進路を遮ってしまう、とか、読者をイライラさせてくれる設定が要所要所でクローズアップされます。


 気短で感情移入たっぷりな私は、「緊急時なんだから法定速度なんぞ無視すりゃいいだろが!」とか「事態が分かってて邪魔する連中なんぞ、轢いてしまえ!」と鼻息荒く本に怒鳴る(本当に怒鳴るわけではないです。心で念じるだけです。それでストーリーが変わるわけではないのですが、どうにもこれは止められません)のですが、走らされている救急車の運転手はそれをしない。
 なぜか?運転手の答えは、この車が救急車だから。「仕事人だ!」と私は思いましたです。自分の職責に対してモラル高く哲学を維持し、常にその哲学がぶれない人を「仕事人」と呼ばずして何と呼びましょうか?私も、かくありたいと思いました。


 以下、急速に感想をまとめますが。
 話し全体は面白いです。軽快に読めるけれど、読んでいて空疎な文章ではない。半分を読んだ辺りで話の結論が分かってしまうかもしれませんが、そのこと自体は、この話の面白さに大きな影響を与えていません。ラストの展開は多少現実感が無さ過ぎて、人によって賛否わかれるところでしょう。映像にするときっとインパクトがあるはずです。本の中ではそれほどのインパクトはありませんでした。ひょっとすると(帯の推薦文の通り)映画化狙いかもしれませんね?
 なぜか今、「県庁の星」の表紙を見た時のことを思い出しました。



【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点(いけます。電車の中で読むのが相応しいと)
読後に何かが残った感じがするか…3/5点(現代の救急医療の問題点について)
繰り返し読めるか…2/5点(今のところ分かりません。数年後に再挑戦)
総合…3/5点(良いと思います)


ロード&ゴー
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