オシムの伝言

オシムのサッカーに夢を抱いた人全般へ

  • ISBN(13桁)/9784622075042
  • 作者/千田善
  • 私的分類/サッカー全般(日本代表)
  • 作中の好きなセリフ/

「日本には、日本が豊かであることを逆にコンプレックスに感じている者がいる。ハングリー精神で勝てるなら、貧しい国ほど強いということになる。しかし、経済的に恵まれ、何でも選べる中からあえてプロを選んだ日本の選手には、サッカーをする喜びがまだある。そこは欧州のカネまみれのサッカーより、ずっといいと私は思う」


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【私的概略】
 イビツァ・オシム氏のサッカー日本監督代表・その後の緊急入院とリハビリ時代、氏の通訳を勤めた千田善氏の通訳体験記。苦心・誇り・友好など、色々あったわけですな。


【感想】
 オシム氏の通訳として殆ど1日中側にいた人が書いた本だけに、オシム氏の性格や特徴が良く分かります。
 ジェフ市原千葉が、できあがったばかりの格好良いスタジアム(フクアリ)で、胸のすくようなサッカーをやっているのを見たとき、あるいは、3Aで韓国チームを押しまくっているのを見たとき(これはジェフ監督退任直後だったと思いますが)「サポーターは幸せだろうな」と余所事ながらうらやましく思ったのを覚えています。


 オシム氏が代表監督に就任した後、オシム氏が全国紙やニュースに登場する頻度が圧倒的に増え、その分「?」だったり「オシム監督が、本当にそんな妙なことを言ったの?」だったりする内容の報道も増えたわけですが、その手の妙な報道がされた事情が、一々詳しく載っているのが、一つ一つ謎解きされてるような気分の良さです。
 総じて言えるのは、「マスコミの(特にスポーツ)報道は、単純に鵜呑みしてはいけないな」ということ。そんなこと一般論としては分かっていましたが、具体的に理解できました。
 ただ、オシム氏は理解の難しい言い回しが多く、それも日本と異なる文化背景を基にした言い回しやジョークが多かったわけで、記者の側も苦労したのだろうな、ということも分かりました。ラテン語のことわざや、赤十字を英語で理解してないと笑えないジョークを言われて困惑しない記者なんて、そうそういないでしょう。


 さすがに実名は無かったですが、日本代表選手の性格や生活態度なんかもよく分かって興味深かったです。
 「若手の手本になって」と間接的にオシム監督のメッセージを受けて、代表合宿中の態度が急に大人になったY選手とか、ケガが多くて原因が飲酒ではないかというX選手とは誰かとか、その辺を推理するのも面白いです。


 オシム氏の特徴は、人の師匠くさい雰囲気です。
 私たち夫婦は、サッカーは観戦する程度ですが、知らず知らず彼の発言をそのまま引用して「しかしね〜君、オシム監督はこう言っとるよ」とか「オシム監督によるとだね〜」というようなことをやっていました。警句として秀逸だったとか、そういうわけではないのですが、あの人が言うと、なんだか意味がありそうな気がする、そんな感じの発言なのです。
 オシム氏が退院された時のメッセージの中に、
『また、みなさまには次のようにお願いします。
スタジアムに足を運び、選手たちに大いにプレッシャーをかけて下さい。もっと走れ、もっとプレースピードを速くしろと。そして選手たちが良いプレーをした時には、大きな拍手を与えて下さるように。』
 と言われて、「ハイ、了解しました」と思ったのは私だけでしょうか。




【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…4/5点(色々考えてしまうかもしれない)
読後に何かが残った感じがするか…4/5点(肝に銘じます)
繰り返し読めるか…3/5点(それなりに間を空ければ可能)
総合…3/5点(オシム監督ファンでなければ退屈な内容ではある)


オシムの伝言
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