季刊サッカー批評 44 サッカー監督の取扱説明書
日常会話ですぐに「オープンスペース」とか「俺流」とかいう表現を使ってしまう人全般へ
- ISBN(13桁)/9784575451023
- 出版社/双葉社
- 私的分類/サッカー辛口評
- 作中の好きなセリフ/
彼らは優れた「チーム」の中にいたから、より素晴らしく見えていたのです。広島の選手達も、いま他チームへ行って輝けるかというと、私は疑問を持っています。
【掲載記事】
- スタジアムを見つめる多くの視線・ボビー・ロブソン (写真記事)
- 監督とは何か? (西部謙司)(2頁)
- 美しいサッカーの理想と現実 (西部謙司)(インタビュー記事・12頁)
- 特効薬「監督解任」の正しい処方とは (大住良之)(4頁)
- 監督は孤独なのか? (海江田哲朗)(4頁)
- 数字で読み解く「J」で成功する外国人監督・失敗する外国人監督 (浅野賀一)(8頁)
- 理想の監督 現代サッカーを生き抜く名将の条件 (8頁)
- 流浪の戦術家 ネルシーニョのリアリズム (川本梅花)(インタビュー記事・5頁)
- 監督はメディアをどう利用すべきか? (宮崎隆司・小澤一郎)(9頁)
- 監督業の醍醐味とジレンマ 柱谷幸一の「回想」 (ミカミカンタ)(6頁)
- 監督と選手の理想的な関係とは? 望月重良の「証言」 (木村元彦)(インタビュー記事・4頁)
- 日本の元祖GMが語る 監督の選び方 (木村元彦)(2頁)
- 監督の24時 ベガルタ仙台・手倉森誠監督を通して視る「監督の仕事」 (後藤勝)(4頁)
- 監督マラドーナの正体 (三村高之)(4頁)
- 地域リーグの名将 戸塚哲也の「流儀」 (宇都宮徹壱)(5頁)
- Jリーグが考える「開かれたJリーグ」のあり方 (ミカミカンタ)(インタビュー記事・5頁)
- フォトエッセイ コンフェデ現地ルポ 南アフリカを行く (原悦生)(6頁)
- Hard after Hard 特別版 TAKE ACTION F.C.の可能性を追う 前編 (大泉実成)(6頁)
- サッカー番組向上委員会 (小田嶋隆)(3頁)
- 海を越えてきたフットボーラー 鈴木良平 (加部究)(5頁)
- ゴール裏センチメンタル合唱団 (綱本将也)(1頁)
- サッカー文芸 哲学的志向のフットボーラー 西村卓朗を巡る物語 (川本梅花)(4頁)
- 僕らはへなちょこフーリガン (川崎浩一)(4頁)
- 母国130年の歴史から紐解く<私的・フットボール温故知新> メンタリティーを知るということ (東本貢司)(3頁)
- 本の紹介 (宇都宮徹壱・秋元大輔・東本貢司・実川元子・編集部)
【感想】
(1)読後感の良かった記事…地域リーグの名将 戸塚哲也の「流儀」(上記15.)
昔々、私が初めてサッカー雑誌を買って読んだとき、最初に目にしたのが、戸塚(選手)代表落ち、の記事でした。何のことやら分からぬままに、どうやら名選手らしいという印象だけを持っていました。一時サッカー番組の解説として登場していました。騒がしからず、どっちかというと無口な印象。しかしながら時折ポロッとユーモアある発言が、実は面白い人なんだろうという印象を持ちました。(僭越ながら私に似ているな、と)
その後、「テレビで見なくなったな〜、あまりテレビ栄えする感じでもないからかな〜」と思っていたら、監督として現場に戻っていた、とのこと。
「そうでしょう、そうでしょう、あの人はテレビじゃなく、フィールドこそが居場所でしょう」と思ったら、異なる地域リーグの3つのチームを3期連続でJFL昇格(殆ど奇跡の難易度です)させていたとのこと。
「そうでしょう。そうでしょう。テレビでは大人しい感じだけど、凄いことをサラッとやりそうなキャラクターの人だよ、あの人は」と思ったら、その人、戸塚氏の記事「3期連続で昇格という困難なミッションを果たした秘訣は、ナ辺にありや?」が出ました。
スペースも少ないので記事を大略すると、選手に対して公平さと愛情を持ってコミュニケーションをとること、そして、サッカーを楽しめる環境を用意することが大事で、この発想は、大昔の「読売クラブ」のスタイルに端を発していることが分かりました。
(2)勉強になった記事…監督はメディアをどう利用すべきか?(上記9.)
モウリーニョやらカペッロやら、監督はチームを強くするのが仕事、どちらかと言えば職人仕事に近いものだと思っていたら、あに図らんや、メディアを操り、戦い、コントロールするのも仕事だったわけで、とても職人仕事ではございません。
ただの名戦術家や名トレーナーは、プロクラブの監督には向かないわけで、その点、サラリーマンと通じるものがありますな。
オシムさんの、マスコミを煙に巻く発言の意味が、(発言自体の内容は理解できんけど、)よく分かりました。
(3)「ふ〜ん。。。」な記事…Jリーグが考える「開かれたJリーグ」のあり方(上記16.)
ミカミカンタ氏。「問題ありと見るJリーグ事務局に乗り込んで討論を行う」の巻です。私が気弱な人間だからか、随分突込みのキツめな質問の数々、「なんだか怒ってるんじゃないか?この人」的心配をしてしまいました。
しかし、こんな感じの人がいても良い。頑張れ!な印象です。
(4)泣きそうになった記事…スタジアムを見つめる多くの視線・ボビー・ロブソン(上記1.)
今は亡きイングランドの名将、サー・ボビー・ロブソンの写真記事。
ピッチ脇からベンチの方を半分振り返った姿が、威厳とも優しさともつかぬ、まさに名将な雰囲気が出ていて◎。
写真の舞台はセント・ジェームズ・パークか。彼が率いていた頃のニューカッスル・ユナイテッドはチャンピオンズリーグにも出場し、ピークを迎えていました。彼を突然解雇してから、チームは緩やかに下降曲線を描き、ついに2部に落っこちてしまいました。
平家物語風の落差を思い、つい涙が。シアラー頑張れ!
【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…4/5点(難しい監督の話だからか、一瞬眠くなりました)
読後に何かが残った感じがするか…2/5点(見慣れた傾向の記事が多い。戸塚監督の話は目新しかった)
繰り返し読めるか…3/5点(数年後に、あの監督は昔あぁだったけど。。的見方ができる)
総合…3/5点