季刊サッカー批評 43 10年後も残るクラブ、消えるクラブ
日常会話ですぐに「オープンスペース」とか「地域密着型の…」とかいう表現を使ってしまう人全般へ
- ISBN(13桁)/9784575450842
- 出版社/双葉社
- 私的分類/サッカー辛口評
- 作中の好きなセリフ/
その基本原則を守った結果として、刀折れ矢尽きてJ2に降格してもいい。そうしたらまたJ1を目指せばいいじゃないか、というのが我々の考えです
【掲載記事】
- スタジアムを見つめる多くの視線・横浜フリューゲルス (写真記事)
- Jリーグの戦術水準を読む (川本梅花)(8頁)
- Jリーグ底辺崩壊の足音 (西部謙司)(インタビュー記事・6頁)
- 名古屋グランパス改革の全貌・万年中位から常勝へのベクトル (木村元彦)(インタビュー記事・5頁)
- 湘南ベルマーレ執行役員兼常務 左伴繁雄インタビュー (宇都宮徹壱)(インタビュー記事・6頁)
- 東京ヴェルディ再建への道 (海江田哲朗)(インタビュー記事・6頁)
- Jリーグはなぜ移籍金撤廃に動いたのか (ミカミカンタ)(7頁)
- 大分トリニータの命脈 溝畑宏社長インタビュー (木村元彦)(インタビュー記事・6頁)
- 理想と現実の狭間で揺れるJリーグのあるべき姿 (谷塚哲)(4頁)
- 水戸ホーリーホックの存在意義 (竹田聡一郎)(6頁)
- 地方クラブの成長モデル ヴァンフォーレ甲府が示す「クラブ再建のヒント」 (後藤勝)(インタビュー記事・4頁)
- タイムリミット クラブ存続の危機に直面するFC岐阜の正念場 (ミカミカンタ)(6頁)
- モンテディオ山形の躍進は「夢物語」なのか (後藤勝)(4頁)
- 愛媛FCの生きる道 (寺下友徳)(4頁)
- Jクラブの育成ビジョン (加部究)(6頁)
- サッカー番組向上委員会 (小田嶋隆)(4頁)
- 逆境を乗り越えた日本人初のMLSプレーヤー (宇都宮徹壱)(3頁)
- 海を越えてきたフットボーラー シジマール (加部究)(5頁)
- ゴール裏センチメンタル合唱団 (綱本将也)(1頁)
- スコットランドの記者が語る 中村俊輔が愛される理由 (2頁)
- Hard after Hard VOL.15 船越優蔵 みたび、輝く日に (大泉実成)(6頁)
- サッカー文芸 哲学的志向のフットボーラー 西村卓朗を巡る物語 第九回「新天地」 (川本梅花)(4頁)
- 僕らはへなちょこフーリガン (川崎浩一)(4頁)
- 母国130年の歴史から紐解く<私的・フットボール温故知新> 報道の自由と責任 (東本貢司)(3頁)
- 本の紹介 (秋元大輔・杉浦文哉・東本貢司・実川元子・編集部)
【感想】
(1)胸が熱くなった記事…モンテディオ山形の躍進は「夢物語」なのか(上記13.)
J2平均以下の予算で、毎年好チームを編成してくるモンテディオ山形の誕生秘話が、素朴な中にも揺るがない芯の強さを感じさせるお話。まるで地元米沢の名君主、上杉鷹山を思わせる感じです、って、なんかステレオタイプな感想。キーワードは「身の丈経営」と、「ブレないクラブ方針」です。
スタートから一貫して、資金不足に苦しんでいたようで、そんなチームがJ1に昇格し、次年度は残留したとは、まるで映画の話のようです。
(2)勉強になった記事…ヴァンフォーレ甲府が示す「クラブ再建のヒント」(上記11.)
身の丈経営しようにも、身の丈が低すぎて潰れそうだったクラブが、その後J1に昇格し、J2降格後も実力のあるクラブとして躍進するようになった理由は何だったのか、というお話。
簡単に言えば、当たり前のこと(組織整備)と、工夫(スポンサー収入増)を積み重ねて成し遂げたわけですが、最初の絶望的な状態からよくもまぁ、ここまでやったもんだと誌面に載っていない苦労が偲ばれます。特に甲府社長の海野一幸氏の写真辺りから。
余談ですが、海野一幸氏の姓「海野」は、長野県中部の歴史ある名族「海野氏」と関係ある姓なんですかね?真田幸村の真田氏ともつながりがあったとされる海野氏が、武田信玄の甲府で頑張ってる、という感じが面白いです。
(3)「ふ〜ん。。。」な記事…Jリーグはなぜ移籍金撤廃に動いたのか(上記7.)
ミカミカンタ氏の記事は、深刻なものが多いようですな。この度もJリーグの無責任体質を厳しく突こうという内容です。うむ。日本サッカーは、どうなってしまうのか?と。この記事の通りならば、太平洋戦争当時の官僚機構にも通じる、由々しき事態です。エラいことだ!
しかし、あれですな。Jリーグを愛する庶民としては、ミカミカンタ氏とJリーグでテレビ深夜大激論というのをやって欲しいところです。
(4)インパクトの強かった記事…サッカー番組向上委員会(上記23.)
効率良く視聴率を取るために試合の放映が打ち切られていくぞ。というお話。
基本的に、サッカーの試合に興味はあっても、放映媒体(この場合はマスコミ)自体の話は興味ないのですが、今回は違った。
最近スーパーサッカーの内容が著しく落ちて視る気を失わせたのは、そういうことだったか、と。明らかにサッカーに興味の無い人が編集に係わっているのだろうと思っていたけども、と。
(5)選手の奮闘を描いた記事…逆境を乗り越えた日本人初のMLSプレーヤーと、Hard after Hard(上記17.と21.)
方や、飛翔したばかりの若手、木村選手。サッカーがやりたい一心で綱渡りのようにして(いや、もちろん合法的手段で、ですよ)アメリカに渡り、言葉に苦労しながら大学で医学を学びつつ大学サッカーで活躍。MLSプレーヤになった、という下積み開花のお話。
もう一方の船越選手は、若い頃から実力を認められた選手が今はベテラン選手としてクラブを渡り歩き、今回も降格したクラブの中で解雇と再契約に揺れる足元のあぶない状況。しかしそれでも何か不動の構えのような気配を感じさせるところが、さすがはベテランだなと思いました。
【私的評価】
電車の中で気軽に読めるか…5/5点(雑誌ですし。読みやすいです)
読後に何かが残った感じがするか…3/5点(読中は感心、しかし忘れます。インパクト薄いのか?)
繰り返し読めるか…3/5点(忘れてるから、読み直せます)
総合…3/5点